【小豆島】唯一無二のプラットフォームになるために –道の駅小豆島オリーブ公園 佐伯 哲 #3

小豆島オリーブ公園#3

「はなれじま広報部」では、広報戦略やECサイトの観点から、離島を振興するための実例やノウハウについてご紹介しています。

今回は、道の駅小豆島オリーブ公園で営業推進部の部長を務める佐伯哲さんにお話を伺い、3本立てのインタビュー記事を制作いたしました。#01でお話いただいたのは、道の駅小豆島オリーブ公園の沿革や運営方針について。道の駅の中でも珍しい運営形態を取る同施設の運営方針をお伺いしています。

>>#1「公益性と収益性のはざまで考える、道の駅としての役割」はこちら
>>#2「「お手本」としての役割に徹するInstagram戦略」はこちら

▼道の駅小豆島オリーブ公園 営業推進部 部長 佐伯 哲氏
1976年生まれ、小豆島出身。大学卒業後、リゾートホテルでの勤務やコンサルタントとしての業務経験を積み、2011年からは一般財団法人小豆島オリーブ公園に勤務。仕事は『楽しむ』がモットー。

道の駅としての役割と、顧客動向の変化

—— #2では、今後集客だけではなく地域への貢献を目指したいとお伺いしました。
現時点で、オリーブ公園は小豆島における観光面において大きな吸引力を持っています。ただ、やはりそれは道の駅としての本質的な要素ではなく、これからは収益を上げつつ地域への還元を増やしていく必要があると思っています。つまり、「どのようにして」収益を得ていくのかを考えなければならないということですね。

—— 観光目的で来園した方を、どのように社会貢献へと巻き込んでいくのでしょうか?
今後は、来園者の方々がそのまま小豆島のメーカーや飲食店の顧客になるような仕組みを作っていきたいと考えています。現状でも小豆島オリーブ公園の年間来園者数は30〜50万人。これはチャンスだと思います。

インタビュー風景

道の駅の役割は地域社会への貢献だと語る佐伯さん(写真右)

これだけの来園者を集めていても、社会貢献という意味ではまだ道半ばです。今の私たちは、道の駅というよりも観光地やオリーブショップとしての側面が強いといえます。小豆島には観光スポットやオリーブショップがたくさんあるので、今後はこれらと競合するのではなく、道の駅というひとつのプラットフォームとして価値提供をしていきたいです。

感性価値に訴えかける必要性

—— 観光客サイドの動向について、変化を感じる部分はありますか?
もうフォトジェニックであるというだけでお客様が集まる時代は終わってきているように思います。その一方で、最近は若い世代の中でも、社会貢献や地域貢献に価値を感じる方が増えてきている印象です。意識や感情を左右するという意味では「感性価値」の重要性が増しているとも言えるかもしれませんね。

—— 観光における感性価値とはどのようなものでしょうか?
旅行を通して「ちょっと良いことをした」という感覚を得ることですね。この部分については、道の駅としての方針と重なる部分もあるので、より感性価値を満たしたいというニーズに応えられるような道の駅に変えていく必要があると思っています。具体的な体験や発信にどう落としこんでいくかは、みんなで考えている最中です。

ECサイトも「プラットフォーム化」を目指す

—— そのような中でECサイトも展開しているとお聞きしました。
はい、「道の駅小豆島オリーブ公園 オンラインショップ」を開設しています。しかしながら、ここを自社商品の販売を積極的に行う場ではなく、他社の良い商品を取り扱うプラットフォームにしたいと思っています。私たちの商品を売るために、他の事業者の商品を差し置くのは本質から外れてしまうと考えているためです。

ECサイトのスクリーンショット

オンラインショップには小豆島の名産品が多数並ぶ

—— それでは、小豆島の商品を集めて収益を得るような場を目指しているのでしょうか?
いえ、私たちはこのECサイトを通して収益を得るのではなく、各事業者の店舗やECサイトに訪れていただくことを目指しています。直接商品を買うことができるのであれば、積極的にそちらに行っていただきたいです。

—— となると、今後ECサイトはどのような位置づけになるのでしょうか?
自社でECサイトを構築するのが難しい個人や企業の商品を取り扱う場にしたいと考えています。個人が作ったお米やオリーブオイルなど、「売りたいけれど売る手段がない」というものが多数あるのです。ただ、これも最終的には生産者やメーカーから直接購入できるような流れを作ることを目指しています。

いずれの場合も、収益のためにECサイト運営をすることはないでしょうね。ひとつのプラットフォームとして、活用してもらうことを想定しています。

難しさは、おもしろさ

—— すべて道の駅としての本質的な価値提供につながっているように感じました。
最終的には地域への価値提供に帰結しますね。あくまでひとつのアイデアに過ぎませんが、手軽に飲食店を出店できるプラットフォームとして、私たちのレストランを活用してもらうような施策もありだと思っています。

こうしたことができるのは、民間の側面と行政の側面を持ち合わせているから。私たちの商売は地域の『ため』ではなく、地域の『おかげ』で成り立っています。地域貢献にも繋がるこんなに面白くて素敵な仕事はないと思います。これがスタッフのモチベーションにもなっていますね。

インタビューに応える佐伯さん

その一方で、収益を出せばそれをスタッフに還元することができます。収益と公益のバランスに悩むこともありますが、「良いとこどり」もできるのが私たちの強みです。これからさらに道の駅としての役割を強化していきたいですね。

—— 大変興味深いお話、誠にありがとうございました!

道の駅としての役割と実際の評価について、ギャップに悩む部分はありつつも、それは伸びしろとも言い替えることができそうです。私自身もこの取材を通して「地域にどんな還元ができているだろうか」と考えるきっかけになりました。佐伯さん、丁寧に取材対応していただきありがとうございました!

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