【小豆島】「お手本」としての役割に徹するInstagram戦略 – 道の駅小豆島オリーブ公園 佐伯 哲 #2

小豆島オリーブ公園#2

「はなれじま広報部」では、広報戦略やECサイトの観点から、離島を振興するための実例やノウハウについてご紹介しています。

今回は、道の駅小豆島オリーブ公園で営業推進部の部長を務める佐伯哲さんにお話を伺い、3本立てのインタビュー記事を制作いたしました。#02では、「魔法のほうき」で一躍有名になった同施設のSNS戦略について、詳しくお伺いします。

>>#3「唯一無二のプラットフォームになるために」はこちら

▼道の駅小豆島オリーブ公園 営業推進部 部長 佐伯 哲氏
1976年生まれ、小豆島出身。大学卒業後、リゾートホテルでの勤務やコンサルタントとしての業務経験を積み、2011年からは一般財団法人小豆島オリーブ公園に勤務。仕事は『楽しむ』がモットー。

まずは足を運んでもらうことが最初のステップに

—— 道の駅小豆島オリーブ公園のSNS方針について教えていただけますでしょうか。
まず、収益性を求めるイベントについて、SNSを使って告知を行うことはあまりなく、オリーブ振興に関する情報を載せることも少ないです。発信の目的はもっと手前にあって、まずはオリーブ公園や小豆島に来ていただくきっかけ作りに主眼を置いています。

話す佐伯さん

収益を上げるにしても、オリーブの振興をするにしても、まずはたくさんの方に興味を持ってもらい、足を運んでいただくのがファーストステップになります。そのため、観光要素を重視し、実際に行ってみたくなるようなSNS発信を心がけています。

—— まずできるだけ多くの人に小豆島に行くきっかけを作っているのですね。
はい。SNSで「広く」集客をして、当施設でオリーブに触れていただくことで「深く」振興や啓蒙をしていくようなイメージです。同じく収益を生むということについても、まずはオリーブ公園にお越しいただくことが前提となります。

—— となると、フォトジェニックなスポットとしての発信は、たくさんの人に来ていただくためのものなのでしょうか?
そうですね。実際、ここ数年「映える」写真を撮影できるスポットとして知られ、多くの方にご来場いただいています。最も有名なのは、ギリシャ風車の前でほうきにまたがり、まるで魔法使いになったかのような写真が撮れるスポットですね。今や小豆島の中でも有数の観光名所になっています。

—— 実際、SNSでもたくさん写真を見かけました。ここから、SNS戦略についてもう少し深掘りさせてください。

メインターゲットは影響力をもつ
「20〜30代の女性」

—— SNS戦略におけるターゲットはどんな層になりますか?
メインターゲットとしては、個人の観光客、もっと言うと20〜30代の女性を想定しています。若い女性は高い情報拡散力を持つ傾向にあり、老若男女にまで影響力を及ぼすためです。

—— メインターゲットに向け、SNSではどのように発信をしたのでしょうか?
ターゲットの策定をした2014年ごろには、ちょうどInstagramが若年層を中心に広く使われるようになってきていました。そして当時、Instagramユーザーのムーブメントとして流行したのは、「模倣して発信する」ことです。

今の時代、綺麗な風景や素敵なスポットの写真を見たいだけであれば、インターネット検索で事足りてしまいます。重要なのは、その中にユーザー自身が入り込むこと。そこで私たちは、自分が身を置きたいと思う体験づくりを心がけました。

—— 具体的にはどのような体験にフォーカスしたのでしょうか。
公園の風景の中で「ほうきに乗って空を飛んでいる」写真を撮ることができるという体験です。ちょうど2014年には実写版「魔女の宅急便」のロケセットが公園内に移設されたこともあり、「これだ!」と思い立ちました。2017年からはほうきを常時貸し出すようになったこともあり、徐々にこれを目当てに来園してくださる方が増えてきました。

ギリシャ風車

ギリシャ風車の前は写真を撮る観光客でにぎわう

「シェアしたくなる仕組みづくり」に徹するSNS戦略

—— このような体験を「真似したい」と思ってもらうために、どのような戦略を立てたのでしょうか?
まず、私たちが中心となって情報発信をするのではなく、来園していただいた方に情報を広めていただくという前提でSNS戦略を立案しました。ひとつのアカウントだけでは、どれだけ発信に力を入れたとしても限界があります。また、ユーザー心理としても、公式アカウントの投稿よりも、自分に近いユーザーの投稿を共有・模倣したいという傾向にあります。

—— あくまで投稿を広めるのは来園者の方々で、オリーブ公園サイドとしては手助けをするだけという意味合いですね。
その通りです。そのため、公式Instagramは、最初のきっかけづくりや「写真の完成度をどのようにして上げるか」というヒント提供に重きを置いて運用してきました。いわば、お手本のようなものですね。そこから投稿がユーザー間で広がり始めてからは、発信の頻度はかなり落ちています。私たちの役割が終わったわけです。

—— 初期の発信について、具体的にはどのような投稿をしていましたか?
ギリシャ風車の前でほうきにまたがり、まるで飛んでいるかのように見えるような写真を投稿しました。写真に写っているのはスタッフではなく、実際に来園していただいたお客様です。「魔法のほうきレンタル中」という文言を添え、来園することで同じような写真が撮れるというイメージづくりをしていました。

Instagramのスクリーンショット

ユニークなポーズのアイデアをInstagramで提供

—— 写真を撮られてるのも、プロのカメラマンではないとお伺いしました。
そうなんです。最初のうちは、私も撮ったりしていました(笑)。ただ、最近はできるだけ写真を撮るのが好きな、小豆島の方々に撮ってもらうようにしています。写真が好きな方に撮っていただくと、その写真が使われた時に嬉しいと思っていただけます。そこから「もっと撮りたい!」というサイクルが生まれるんです。

撮られる側のお客様にも、嬉しいと思っていただけているようです。こちらが掲載した写真を拡散していただくことも少なくありません。こうした広がりは、モデルさんやカメラマンを起用した場合には生まれないものですね。ちなみに、ホームページやチラシで使用している写真も、お客様に撮らせていただいたものです。

—— 現地での体験についても、Instagramの戦略と連携している部分はあるのでしょうか?
Instagramでシェアしたいと思っていただけるような体験づくりを心がけています。今の時代、旅先での写真は自分で見返すだけではなく、誰かと共有するのが当たり前になってきています。

そのため、たとえばオリーブの栞づくり体験ひとつとっても、シェアしたくなるようなデザインの栞を作れるようにしています。レストランでは、見栄えはもちろんのこと、調理過程も含めて「誰かに伝えたくなる」メニューを開発しています。小豆島産のオリーブオイルを、下ごしらえから仕上げまで一貫して使用している商品などですね。

他ツールも「使い分け」を意識

—— Instagram以外のSNSにおける戦略や方針を教えてください。
Instagramのほかには、FacebookとXのアカウントを運用しています。それぞれ、ユーザー層や使われ方が異なるため、投稿する情報の内容を変えるようにしています。

Facebookでは、休館日のお知らせや新商品の情報、イベント開催に関する内容など、「公式としての発信」をするようにしています。X(当時Twitter)のアカウントもあるのですが、オリーブ園としてはフォトジェニックなスポットであることを訴求しているので、文章がメインになることから、あまり相性が良くないと考え、あまり注力していないのが現状です。

Facebookのスクリーンショット

主に公式情報を伝える公式Facebookアカウント

—— 集客ツールとしてはやはりInstagramが最も適しているのでしょうか?
私たちにとってはInstagramがベストでした。それぞれの場所や事業者によって発信すべき情報やターゲット層も異なるので、一概にInstagramだけが良いとは言い切れないと思います。

広めるフェーズから、次の段階へ。

—— 写真が拡散されるようになってしばらく経ちますが、今はどんなフェーズにさしかかっているのでしょうか?
もっと道の駅としての役割を果たせるようにシフトしていかなければならないと考えています。おかげさまで経営や運営体制は安定してきており、観光地としての評価も極めて高い状態です。

佐伯さんの横顔

しかし、私たちが道の駅を運営する以上、本質は地域や社会に貢献することだと思います。多くのお客様に来ていただけるような魅力的なスポットであり続けながらも、そうした地域社会への還元にも注力していくことを目指しているのです。

—— 地域社会への貢献こそが、道の駅としての本質ということですね。それを踏まえ、#3ではECサイトの運営や今後の展望についてお話をお伺いします。

>>#1「公益性と収益性のはざまで考える、道の駅としての役割」はこちら
>>#3「唯一無二のプラットフォームになるために」はこちら

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