【淡路島】毎年新商品を発売!収益を生む商品開発のススメ –株式会社今井ファーム 今井 剛 #2

今井ファーム#2

はなれじま広報部では、離島における広報やECサイト運用の事例を元に、離島のこれからを紐解いていきます。今回は、株式会社今井ファームで代表を務める今井 剛さんにインタビューを行い、2本立ての記事を制作しました。#02では、「頻繁に行われる商品開発に込めた想い」をお聞きしました。

>>#1「楽天を起爆剤にした玉ねぎ農家の「選択と集中」」はこちら

▼株式会社今井ファーム 代表取締役社長  今井 剛氏
兵庫県淡路市出身、淡路島で生まれ育つ。2002年、佐川急便株式会社に入社し、セールスドライバーとして10年間勤務。同職を退いた後、先代とともに2代目として今井ファームの運営に携わることに。2018年からは既存事業の拡大に伴って設立した「株式会社今井ファーム」で専務取締役を務める。

玉ねぎの出荷と加工品販売を主軸に

—— 今井ファームでは、毎年玉ねぎとそれを使った加工品を全国に出荷されていますね。
はい。元々玉ねぎの生産・出荷をメインにしていたのですが、ありがたいことにその勢いは今でも健在で、玉ねぎの収穫が終わるまでに受け付ける購入予約は1万5千件にも上ります。当社では「かくし玉」以外の玉ねぎも取り扱っていて、自社ブランドの玉ねぎ「かくし玉」は今井ファームから、通常の淡路島産玉ねぎは提携農家さんから出荷する形をとっています。

そして、加工品も合わせると、2023年度は計28万件ほどの出荷件数を数えました。最近では玉ねぎの販売と加工品の販売という二つの軸で事業を展開しています。


—— 保管や出荷対応はどのようにされていますか。
「かくし玉」は社内の大型冷蔵庫内で保管します。最近では容量が不足してきているので、冷蔵庫を増設中です。出荷対応についても基本的には自社で行っていますが、2024年から加工品を神戸の物流倉庫から出荷するようになりました。ECサイトと倉庫が連携しており、注文が入ると自動的に出荷作業が行われるシステムです。

新たな商流を生む商品開発

—— ECサイトを拝見すると、ハンバーグやカレーなどたくさんの商品が並んでいますね。
今井ファームでは自社商品の開発に力を入れていて、1年に1商品は新商品が発売されています。直近では年間2〜3商品のペースで開発が進行していますね。

ECサイトにはカレーや牛丼など、玉ねぎを使用した商品が多数並ぶ

—— 商品はどのようなコンセプトで開発されているのですか。
まずは淡路島の玉ねぎを原料として使っていること。そして、需要がある商品を「当てにいく」ことです。カレーだけでも2種類販売しているのですが、お土産用とネット販売用でパッケージの形やデザイン、価格設定を変えています。ターゲットとするお客様に刺さる商品を作るという視点は決して失わないようにしています。

—— これらの商品はどなたが考えているのでしょうか。
すべて私が発案しています(笑)
お客様の声を聞いたり、展示会で他社の製品を見たりして新たな商品のアイデアを練っています。頭のどこかでは常に新商品のことを考えていますね。

—— ここまで積極的に商品開発を行う農家は珍しいですね。
そうなんです。加工品をたくさんラインナップして間口を広げることで、私たちの玉ねぎに興味を持ってもらうのが狙いです。

農業を営む事業者の多くは、作物を生産することに特化していて、販売を市場や農協に任せています。ただ、その商流では利益が生まれにくいのが現状です。商品に付加価値をつけるのが難しい上、規格外の作物を廃棄せざるを得ないことだってあります。


—— その点、今井ファームではそうした課題は解決できている、と。
そうです。腐ったもの以外は、大きさや形が不揃いのものも加工品の原料に使うなどして余すところなく活用するようにしています。味にはなんの影響もないのに、もったいないじゃないですか。自社商品の開発はそうした経緯で始まりました。

—— 特に玉ねぎの加工に関して、淡路島内で競合する事業者はありますか。
ぴったり事業領域が重なっている会社は1〜2社程度になります。その事業者も玉ねぎの生産は行っておらず、仕入れた玉ねぎをアウトソーシングで加工するというビジネスモデルをとっているようです。

最近では類似の商品を開発する事業者も増えてきていますが、あまり気にしないようにしています。模倣されること自体を防ぐのは難しいですし、結局のところ自分たちで顧客を獲得しなければならないですしね。

—— 現在開発している商品はどのようなものでしょうか。
玉ねぎが一玉まるごと入ったスープです。淡路ハイウェイオアシスや道の駅うずしおなど、島内を中心に販売していきます。お土産としてのインパクトが強いので、これは売れると確信しています。この商品に関しては、提携している事業者と専属契約を結んだので、真似されないよう対策ができています。

取材時に開発中だった「淡路島たまねぎ丸ごと たまねぎスープ」

この島で、事業を続けていきたい。

—— 続いて、今後の方針や展望についてお伺いします。これからどのように事業を展開していこうとお考えですか。
玉ねぎを軸にした事業は続けていきたいと思っています。何でも屋さんになりたいわけではないので、玉ねぎの栽培に誇りやこだわりを持ち、この島、この業界で事業を続けていきたいと思っています。

——近年、農業体験をテーマパークのように提供する事業者も多く見られます。そうした展開もあるのでしょうか。
それに関してはあまり考えていません。顧客対応を主体にしたサービスを始めると、今以上にリソースが必要になります。現状は生産と販売に特化した事業形態をとっていることから、あまり現実的ではないですね。そもそも私たちの事業所が来客を想定した造りではないこともあります。

農業テーマパーク化は考えていないという

—— パソナグループの進出もあって賑わう淡路島ですが、そうした変化についてはどう捉えていますか。
商機が増えるので、私たちとしては断然ウェルカムです。生まれてこの方淡路島に住んでいる身からすると、明石海峡大橋が架かったタイミングから、商売人にとって追い風が吹き続けてきたように思います。今以上に人がたくさん往来するようになることで、新たなビジネスチャンスが生まれることも期待しています。

—— 今後の発展に期待大ですね。本日は貴重なお話、ありがとうございました。


必要なことを見極め、その道を突き進む。口にするのは簡単ですが、そのスタイルを実現するためには、綿密な戦略と熱い想いが必要不可欠です。これから事業体をどのような形で運営していくのか、特に一次産業はターニングポイントを迎えているといえるでしょう。そしてそこに、ECサイトをはじめとしたWEB上のツールが深く関わってくるのは言うまでもありません。

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