離島が好きだ。離島が気になる。でも、その理由を聞かれるとうまく答えられない…どんな関わり方をしてよいかわからない…。離島と一口に言っても、全国に417ある有人離島は千差万別で、その魅力を説明するのは難しいかもしれません。
そこで、はなれじま広報部が伺ったのは東京・日本橋にある離島専門のアンテナショップ「離島百貨店」。全国100以上の離島と連携して、特産品の販売や離島の食材を使った食事の提供を行っています。
日々、全国の島々に関わり、自らも離島の出身者である一般社団法人 離島百貨店の小池岬さんに、離島の魅力や離島と個人・企業間の理想の関わり方についてお聞きしました。

▼一般社団法人離島百貨店 販路開拓プロジェクト 小池 岬 氏
伊豆大島出身。高校進学に伴って島を出たのち、福岡で働いていた際に「離島キッチン」と出会う。その後株式会社離島キッチンの代表取締役に就任。現在は「離島百貨店」で、商品の仕入れや生産者とのやり取り、店舗での販売に携わっている。
1島ではなく「離島」としてブランディングする
——まず、「離島百貨店」がどのように始まったのか教えていただけますか?
(小池さん:以下、敬称略)元々は2009年に島根県の海士町観光協会が始めた「行商人プロジェクト」という取り組みで、キッチンカーで全国を回りながら島の物産を販売していました。
ただ、海士町(中ノ島)単体だと出身者や行ったことがある人の目にしか留まらず、なかなか認知が広がらなかったんです。そこで、1島ではなく何島も集まって「離島」そのものをブランディングすれば注目度が上がるのでは、という思いで「離島キッチン」として運営を始めました。
2015年に「離島キッチン」初の直営店として神楽坂に飲食店型のアンテナショップをオープンしてからは、福岡や札幌、日本橋に展開していきました。
アンテナショップでは島の食材を調理して付加価値をつけて提供するほか、暮らしや観光、仕事といった島に関する情報発信の拠点にもなっています。

(小池)そのなかで、私はアンテナショップの運営として島の生産者から商品を仕入れたり、販売したりといった業務をしています。「ここで売りたい」という生産者の商品はなるべく扱いたいと思っているので、どう付加価値をつけて高く売っていくか一緒に考えるようなこともしています。

——企業や自治体との連携も進んでいるのでしょうか?
(小池)はい。離島同士や離島と企業が連携できるプラットフォームを作るために、2019年に一般社団法人離島百貨店を立ち上げました。
離島には、その中で生活するために必要なものがすべて揃っているので、「全部ある」という意味で「百貨店」と名付けたんです。いまでは100を超える離島と30以上の自治体が加盟して連携が生まれています(2024年10月時点)。

——直近で取り組んでいることはありますか?
(小池)いま取り組んでいるプロジェクトとしては、離島専用の物流倉庫があります。離島百貨店で持っている倉庫の維持費を各自治体に少しずつ負担してもらい、島の特産品を外に出すときのインフラとして使っていただくというモデルです。

(小池)教育や福祉、医療など、単独の島ではビジネスが難しいものでも100や200の島が集まると大きな市場になるので、離島同士が連携することで企業が入ってきやすい環境が作れるのではと考えています。
離島に共通する魅力とは?
——離島と一口に言っても千差万別だとは思いますが、「離島」というくくりでブランディングをしている小池さんから見て、共通する魅力はあると思いますか?
(小池)島では「人が面白い」という声はよく聞きます。都会とはまったく違う時間軸と常識で生きているので、島の人々との交流は魅力的なのでしょうね。
私たちが島のイベントをするときは20〜30代の女性と40〜50代の男性の参加率が高いのですが、特に若い女性は島では珍しい分、話しかけられて交流が生まれやすく、結果的に離島に対する満足度や期待度が高まるのだと推測しています。
あとは選択肢が少ないので、判断の工数がかからないというのもあります。ご飯を食べに行くにしても、都会では無数に選択肢がありますが、島では1軒しかなかったり。不便な部分でもあるのですが、同時に魅力でもあるかと思います。
ほかにも、島の歴史や文化も魅力的ですよね。種子島が鉄砲伝来の地だったり、後鳥羽上皇が流されたのが隠岐の島だったりと、これまで学んできた歴史が意外なところでつながる面白さがあります。

海士町には「因幡の白兎」伝説で知られる大国主命(オオクニヌシ)が祀られる神社も。
——島という閉じられた空間のなかで、スケールの大きな歴史の一端が感じられるのは面白いですね。
(小池)すべての島を網羅する切り口はありませんが、島の特色によって様々なテーマに紐づけて楽しみ方が提案できるのも島の良さだと思います。
自然が魅力であれば、山登りや海水浴、釣り、サーフィン、ダイビングが切り口としてありますよね。先ほどの歴史や文化の切り口でいうと、例えば海士町には後鳥羽上皇を祀る隠岐神社があるほか、秋には「ごとばさん芸術文化祭」が行われるなど、いまも島に残る後鳥羽上皇への親しみを随所で感じることができます。
YouTube撮影やドローン空撮をするならこの島!といった切り口や、ワーケーションや研修に使うならここ!といった切り口もあるかもしれません。

——島を楽しみ方別にカテゴライズすることで、そのなかの1島でも知っていればほかの島にも興味が出てきそうですね。
(小池)あとは企業目線でいうと、実証実験がしやすいというのも島の良いところです。海に囲まれているので対象となる範囲が明確ですし、それでいてある程度の規模感は確保できます。さらに、住民との合意形成がスムーズに行える場合が多いので、スモールスタートで始める場所として適しているように思います。
コミュニケーションで関係人口を生み、投資で市場を作る
——こうした島の魅力を知っている身として、小池さんは島に関心がある方にはどんなふうに島と関わってほしいと思いますか?
(小池)色々な関わり方ができるのが島の面白いところですが、現地の人との交流は島の大きな魅力なので、コミュニケーションが生まれる関わり方が理想ですね。
仕事だとコミュニケーションが必ず生まれますし、ボランティアや現地のイベントに参加するのもいいと思います。島のマラソン大会の中には、終わったあとにバーベキューができるものもあります。
綺麗な景色を見てのんびりするのももちろん良いのですが、現地の人とつながることで関係人口になる人は多いと思うので、ぜひ人との交流を楽しんでほしいですね。

——島外の企業には、どのような関わり方を期待しますか?
(小池)島ならではの規模や住民との距離感をチャンスと捉えて、投資の対象として見てほしいという思いがあります。いまはワーケーションやリモートワークを島でできるようになっていますが、それは都市部の仕事を持ってきているだけなので、島の産業にはなりづらいんです。
そうではなく、島で需要があるポイントに企業がお金やノウハウを投資して、そこが若者の働き口になれば持続可能ですし、仕事の有無が気になる移住者の不安解消にもなると思います。さらに、そこで成長した若者を次は都市部の企業が採用する、というように島のなかで市場を作っていく関わり方をしてもらえるのが理想です。
離島×〇〇で、島を知るきっかけを作りたい
——島と、関わる人や企業がWin-Winになれる関係が作れるといいですよね。最後に、今後の「離島百貨店」の方向性を教えてください。
(小池)まず、島の生産者には、島外でのテストマーケティングの場として「離島百貨店」を使ってもらえたらと思っています。
島の人にとって、島外での販売価格を決めるのは結構難しいことだと思うんです。ですので、まずは離島百貨店で売ってお客さんの反応を見ることで、価格の感覚をつかむのに役立てれば嬉しいですし、反対に私たちから「このくらいの価格で出してみませんか」と提案もできると思います。
私たちは「離島百貨店」で売ることだけをゴールにしているわけではなく、ここから他の百貨店やスーパーに卸したりもしています。生産者の方がここに商品を置く価値を感じてもらうためにも、そうした販路を拡大したり集客に力をいれたりして、販売力を上げていきたいですね。

(小池)離島百貨店に来てくださるお客さんに対しては食や物販、イベント、情報発信を通して、これまで知らなかった島を知るきっかけを作りたいです。
例えばこれまで、離島百貨店では怪談師を呼んで島にまつわる怪談を話してもらったり、島と副業に関するイベントを行ったりしていて、「離島×〇〇」の色々な可能性を模索してきました。

——本土でやりつくした〇〇も、島では目新しかったりしますよね。
(小池)そうなんです。「離島×車」を例にすると、レンタカーが足りなかったり、ジオパークに排気ガスを多く排出する車が走っていたりします。そうした課題に対して、自動車メーカーや販売店が投資して、インフラの整備やSDGsに配慮したプロジェクトの実施ができる可能性はあると思います。
また、全国各地でどんどん人が減ってインフラが老朽化する中、社会として必要とするものが島には多くあるのではないでしょうか。1島だけではビジネスにならないかもしれませんが、100島集まればビジネスチャンスがあるかもしれない。遠隔医療はその一つですし、習い事や塾、娯楽もそうですよね。
島にはビジネスの「余地」がたくさんありますので、これからも様々な企業と一緒に連携事例を作っていきたいと思います。
——私たちもぜひ協力させてください!

編集後記(卜部 奏音)
「離島の良さってなんだろう?」
島に惹かれる気持ちは強いものの、なぜそう思うのかうまく言語化できなかった私にとって、今回の執筆でその答えの一つを得られたように思いました。
特に共感したのは、都市部とは違った時間軸や常識が島にあるという部分。「自分が生きている世界がすべてじゃないんだ」という別のよりどころを持てる感覚を、島で過ごす時間のなかで知らず知らずのうちに得ていたことに初めて気づきました。
「島に行くことで、知らない間に都会の常識に偏っていた軸がチューニングできる」とは島好きの友人の言葉ですが、まさにそれだ!と腑に落ちたインタビュー内容でした。
企画・取材:ハテシマサツキ
執筆・編集:卜部 奏音






