はなれじま広報部のライター、飯田まりかです。
今回の舞台は、愛媛県松山市の沖合に位置する興居島(ごごしま)。
これまで訪れたことはなかったものの、ある時耳にしたのが「神社がたくさんある」という情報。
何を隠そう、寺社仏閣好きの私はいてもたってもいられなくなり、愛媛へと向かいました。
そんなきっかけから始まった、レンタサイクルを相棒に巡るゆるり興居島旅をお届けします。
興居島(ごごしま)ってどんな島?

愛媛県松山市の沖合に浮かぶ、面積8.4㎢、人口約900人(2025年時点)の有人離島。
島のシンボル「小富士(伊予小富士)」はその名の通り美しい富士山のようなたたずまいで、日本離島センターの「しま山100選」にも選定されています。

温暖な気候を活かした柑橘系の栽培が盛んで、「みかんの島」としても知られている興居島。
島内には、四国八十八ヶ所巡りのミニチュア版ともいえる「島四国」が点在しています。
その全てを巡ると、本家の四国八十八ヶ所巡りと同様のご利益があると言われているんだとか。
高浜港から興居島へ

松山駅から電車に揺られて約25分、フェリー乗り場の最寄り駅・高浜駅に到着しました。
駅を出ると、目と鼻の先にフェリーターミナルが現れます。
興居島行きのフェリーには島の北部に位置する「由良港」行きと、南部にある「泊港」行きの2航路がありますが、今回は島の北側にある神社を目指したかったため、由良港行きを選びます。
平日ということもあり、乗船客は10人ほど。
観光客よりも工事関係者や配達員、地元の方など、島にゆかりのある方が多い印象です。
約15分の短い船旅。
あっという間に興居島の由良港が見えてきました。
レンタサイクルを借りて、いざ散策

由良港に到着すると、他の乗客たちはそれぞれの目的地へ。
気づけば港に残っていたのは、私と外国人のご夫婦だけ。
レンタサイクルがあることは事前に調べていたものの、どこで借りられるのか分からず…。
どうしようかと考えていると、目の前にそっとスマホが差し出されました。
「自転車はどこで借りられますか?」と翻訳アプリに表示された日本語。
どうやら私と同じく迷っている様子です。
「I’m also looking(私も探しています)」とカタコトの会話から始まり、聞けば2人はドイツからはるばる来ているとのこと。
たまたま通りかかったフェリーの船員さんに声をかけると、そのまま手続きをとることができました。
ドイツ人夫婦の旦那さんに貸し出された自転車のサドルが高くて、「僕は脚が短いんだ」と笑っていたのを覚えています。
やや前置きが長くなりましたが、2人と別れ、微笑ましい気持ちのまま自転車散策がスタートします。
磐神神社(いわがみじんじゃ)

自転車で島を北上し、最初に辿りついたのが磐神神社。
外周道路から山側へ曲がり、しばらく進むと立派な鳥居が現れました。
近くに自転車を停めて石段を上がると…

目の前に現れたのは、なんと周囲34メートルもの巨大な花崗岩。
この岩そのものが御神体(神様がやどる場所)で、海上安全の神様である磐長姫命(いわながひめのみこと)が祀られています。
かつて帆船で行き来していた時代には、海上からこの神社を遥拝(遠くから神社に向かって拝むこと)しなければ、追い風を受けられないとされていました。
また、白蛇伝説や祟りの言い伝えなども残る、島でも神聖な場所のようです。
たくさんのことを学びながら巨大な御神体を見上げて数分、そろそろ次の目的地へと向かいます。

しばらくきつい上り坂が続き、息を切らしながらペダルをこいでいきます。
船越和気比賣神社(ふなこしわけひめじんじゃ)

島の中央部まで戻って訪れたのが、船越和気比賣神社。
ここに祀られている和気比賣命(わけひめのみこと)は島の名前の由来にも関わる神様で、興居島の総鎮守として大切にされている神社です。
昔、漁師が拾った壺から現れた女の子が和気姫。
成長した彼女は伊予王子と結ばれ、その子孫が豪族・河野家の祖に。
そして、和気姫が暮らした島は「母が住む島」という意味で「母居島(ぼごじま)」と呼ばれ、それが時代とともに「興居島(ごごしま)」へと変わっていったのだそうです。
旅の途中で島のルーツに触れると、さっきまでの景色が少しだけ違って見えてきます。

船越和気比賣神社には、書き置きの御朱印とお守りがありました。
島には小さな神社がたくさん

興居島を自転車で巡っていると、観光名所というより”島の日常”に寄りそう小さな神社をよく見かけます。
航海安全や大漁を祈願する社、派手さはないけれど、どれも島の暮らしと深く結びついた場所。
自転車をとめて静かに手を合わせて思うのは、当たり前のように船に乗って行き来できることのありがたさ。昔は風が強ければ海に出ることさえできず、生活そのものが天候に左右されていました。
そんな時代の人々にとって、神社は海と向き合うための大切な心の拠り所だったはずです。
便利さに慣れてしまった今だからこそ、島の神社は「当たり前のありがたさ」を静かに教えてくれる存在でした。
そして帰路へ

港に着くと安心感からか、疲れがどっと押し寄せてきました。
帰りのフェリーはもう着いていて、あとは乗船するだけです。
夕方の海沿い、潮の香りが旅の終わりを告げているようでした。
タラップが外され、船はゆっくりと港から離れていきます。
行きはワクワクを感じたのに、帰りは切なさに変わる不思議な感覚。
みかんの季節に戻って来たいなと思いつつ、帰路につきました。
ライター:飯田まりか






