【佐渡島】漢字であらわす冬の佐渡旅。

佐渡おけさの銅像

島の魅力を言葉であらわすのは、とっても難しい。
海なのか、人なのか、食なのか…
今回は私たちなりの答えを見つけるため、真冬の日本海に繰り出しました。

今回の舞台となるのは、佐渡島。面積は東京23区や淡路島の約1.5倍、一周はなんと約280kmもある日本最大の島。それだけ大きな佐渡島には、ついつい言葉にしたくなるような魅力が溢れているに違いない!

…ということで、編集長・ハテシマサツキと副編集長・卜部が、5枚の写真に漢字1文字ずつをあて、佐渡の旅をあらわしてみます。同じ景色を見て、それぞれどんな魅力を感じ取るのか。2人の思考の様子をお届けします。

佐渡島ってどんなところ?
新潟県の沖合に浮かぶ日本最大の離島で、2025年時点で約4.8万人が暮らす(出典:住民基本台帳)。本土からはフェリーで約2.5時間、高速船で約1時間。かつて世阿弥が配流された歴史があり、今でも数多くの能舞台が島内に残る。野生復帰したトキや、世界遺産に登録された佐渡金山が有名。

1文字目「霞」と「感」

佐渡へ向かうフェリーからの一枚


まずは、佐渡へ向かうフェリーからの一枚。

卜部 奏音:霞(かすみ)

新潟港を出発して約2時間。ぼんやりと靄をまとった佐渡島の姿が見えてきて、かつて太宰治が短編『佐渡』で「雲煙模糊の大陸」と書いたことを思い出しました。フェリーが島影を捉えたのにどんどん離れていくことに狼狽し、その先に「満州ではないか」と思うほどの大陸が広がるのを見た太宰。

実は、先に見た島影は佐渡の南に広がる小佐渡山地、後から出てきた大陸は北に広がる大佐渡山地。そして、それを結ぶ平野が闇にまぎれて見えなかったというオチですが、確かに大きな大きな島です。さすがに満州は無理があると思うけど。

ハテシマサツキ:感

ゆったり一定の周期で揺れる船から外を見ると、雪に覆われた大きな島が横たわっている。肌を刺すような寒さに肩をすくめつつ、人生初の佐渡島に胸が高鳴る。離島メディアを運営していながら、日本最大の離島に行ったことがないという「佐渡コンプレックス」を、ようやく払拭できる…感涙。

来訪者としての「離島感」は、移動の距離に比例すると思う。関西に住んでいると、淡路島へ足を運ぶ機会も多いものだが、定期船を利用する機会は少ない。その点、フェリーやジェットフォイルを使うしかない佐渡へ向かうと、島に渡るのだという感覚をしっかり味わえるように思う。海があることを実感できる体験は大きいのだろう。

2文字目「映」と「直」

インタビュー取材を行った際の写真


滞在中、佐渡で映像制作をするスタジオママクワンカの代表・山本さんにインタビュー取材を行った際の写真。

卜部 奏音:映

取材中のひとコマ。カメラマンであり、自身で取材を担当することもあるというインタビュイーの山本さんは、「ここだと背景の抜けがいいですかね?」「こんなポーズどうですか?」と積極的に提案してくださり、ありがたい限り…景色や人を映し続けるプロの姿勢が取材の対応からもにじみ出ていました。

ハテシマサツキ:直

一番刺さったのは、山本さんの「離島は消費コンテンツではない」という言葉。私たちは離島の面白さや魅力を伝えるべく島に渡り、その地に根ざす文脈を深掘りしてきたつもりだったが、果たしてそれが島に暮らす方々の迷惑になっていないと言い切れるのだろうか。メディアとして、調査者として、島外のプレーヤーとして。なす事を見つめ直す機会となった。

3文字目「時」と「始」

佐渡魚市場の様子


早朝、2人は佐渡魚市場の見学へ。

卜部 奏音:時

朝6時半、魚市場へと向かった目的は競りの見学。
7時を過ぎると続々と仲買業者が集まり、漁船から魚が運び込まれるたびに競りが始まりました。1回の商品にかける時間は、わずか数十秒。その短い時間のなかで仲買業者が次々と値段を口にし、競り落とした業者の名前を書いた紙が魚の箱へ貼られていきます。スーパーや回転寿司に並ぶ魚たちの、「その前」を見た3時間。この日のお昼はもちろん、寿司でした。

ハテシマサツキ:始

海鳥とともに、漁船が市場に併設された岸壁へと向かってくる。船が着くやいなや、船底から大量の魚たちが引き上げられ、男たちの頭上から降り注ぐ。大勢が各々のやるべき仕事を全うしているその様子に見とれ、気づいていたら3時間が経っていた。働く人たちの真剣なまなざしは格好良い。佐渡の朝が始まるのを目の当たりにした。

4文字目「米」と「層」

島内に点在する棚田


島内に点在する棚田のひとつ。

卜部 奏音:米

海、棚田、雪、めっちゃ佐渡らしい!と感じた景色。実は佐渡は米どころ・新潟の中でも特に美味しい場所として、魚沼、岩船に並ぶ3大産地の一角です。つまり米どころof米どころ、日本最高峰と言っても過言ではない米の生産地。

さらに、トキと共生する農法や山間部に広がる棚田が評価され、世界農業遺産にも認定されています。残念ながら滞在中にトキは見られませんでしたが、海を見渡す棚田の景色に島らしさを感じました。

ハテシマサツキ:層

丘に登るうち、さっきまで吹き荒れていた海風は止んだ。雪を踏む音だけが足裏から伝わってくる。最後の一歩を踏みしめて顔を上げると、何世代にもわたって受け継がれてきた棚田が広がっていた。ここで今年も稲穂が実ることを想像してみる。自然の中で繰り返される人々の営みが、この景色を作ってゆく。実用が織りなす景観ほど、美しいものはないと思った。

5文字目「飲」と「覗」

島内南部、北雪酒造


島内南部、北雪酒造にて。

卜部 奏音:飲

佐渡島に5つある酒蔵のひとつ、北雪酒造。売店のお酒を見ていたら「1本しかないんですけど、試飲しますか?」と酒蔵のおじさんが声をかけてくれました。

ドライバーのハテシマさんには申し訳ないけど、大の日本酒好きとしてはいま!飲みたい!!恐る恐る「試飲してもいいですか…?」と聞いてみると、「いいですよ」と編集長。ほっ。

試飲は1本のはずが、飲み終わると「古いんだけどこういうのもあってね~」と次から次へと冷蔵庫からお酒を出してくれるおじさん。日本酒だけでなく焼酎や梅酒までどんどん出てきます。勧められるままに飲むこと9本。いやーーほんとに美味しかったです。特に佐渡の伝統芸能「鬼太鼓」の鬼を模したラベルのにごり酒は、クリーミーながらすっきりとキレがあって最高でした。

ハテシマサツキ:覗

私はこの取材中、お酒を飲むことができなかった。運転手だからではない。下戸なのだ。これまでお酒はすべて同じように見えていたし、今回の旅でもそれは変わらないと思っていた。

しかし、試飲こそしないものの、佐渡の地で日本酒の世界に少しだけ触れ、一滴に込められた想いや苦労、喜びを知った。私は目に見えるものしか見ていなかったのだと、恥ずかしくなる。これからは少し興味をもってみても良いのかもしれないと思った。飲めないものは飲めないけれども。

佐渡を漢字1文字であらわすなら?

最後に、それぞれ漢字1文字で佐渡島を表現してみることにしました。
果たして、2人はなんと書くのでしょうか?

卜部 奏音

習字の様子「多」


佐渡は、どこを見るかで印象ががらっと変わる多面的な島です。中心の平野部では、田んぼが広がる景色の中にJAの巨大な精米所が現れ、まるで新潟平野や庄内平野にいる気分。一方で島の中心地は、全国チェーンの書店や洋服店、ネットカフェが国道に沿って並び、地方都市のような雰囲気です。

そして、海に沿ってくねくねと延びる道路を走ると荒れた日本海が眼下に広がり、ようやく島にいる実感が湧いてきます。3日間いても、まだ半分ほどしか回り切れなかった佐渡。その多様性を味わいつくすには、もっともっと時間が必要なようです。

ハテシマサツキ

習字の様子「新」


新潟の「新」、新発見の「新」。あらゆる島に通ううち、島の相場感を知ったような気でいたけれど、まだまだ知らないことがたくさんあると身をもって知った取材だった。海風の冷たさも、まちに漂う勢いの兆しも、ここに住む人たちのあたたかさも。事前のリサーチだけでは知ることができなかった情報が、五感を伝ってなだれ込んでくる。

私は今回佐渡に赴いたことで、20代後半の時間を島に学びながら過ごすことができて本当に幸せだと感じた。そして、これからもっと新しいことを知ることができると思うと、楽しみで仕方がない。

企画・執筆・編集:ハテシマサツキ、卜部奏音

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