1月の北海道・利尻島へ向かった、はなれじま広報部。寒さや吹雪、営業している店探しなどの苦労をしながらも、冬ならではの景色や島民のリアルを目の当たりにします。この記事は、はなれじま広報部・編集長のハテシマサツキが写真多めでお伝えする、島=南国のイメージを覆す探訪記です。
ドキドキ!はなれじま広報部・利尻島編
私たちがメディアのご紹介をしていて思うのは、「島」と聞くと「南国」を思い描く方が少なくないということ。実際、スマートフォンで「しま」と打ち込むと、ヤシの木の絵文字が出てくるのはこうしたイメージが形成されているからではないでしょうか。
そうした背景を元に立ち上がった今回の企画。「冬の島」のリアルな様子を伝えたい!という一心で、1月の北海道へと飛びました。大阪から新千歳空港へと飛行機で移動して、そこから稚内へはレンタカーで。そして、稚内港からフェリーで利尻島を目指します。札幌からは一年を通して利尻島への直行便があるのですが、冬の海を体感するために船での移動を決意しました。
天候に阻まれながらも辿り着いた利尻島のリアルをお届けします。
「天候調査中」の5文字
2025年1月時点、冬期に稚内と利尻を結ぶ定期船は1日わずか2便。当初の行程では早朝発の第1便で利尻島に渡る予定でしたが、不運にもその日はあいにくの吹雪に見舞われ、第1便が欠航してしまいました。当日未明まで暴風雪警報が出ていました…。
港に向かってみると、海は大きく荒れているのが見え、電光掲示板には天候調査中の文字。原稿を書きながら待機を続けますが、窓の外を見ていると不安になります。
待つこと数時間。定期便は欠航になったものの、臨時便が出ることになって歓喜。もし乗れなければ稚内に足止めだったので、本当に良かったです。
ただ案の定、船は大きく揺れました。しっかり座っておかないと腰が浮くレベル。窓の外では空と海面が交互に大きく映り、横揺れしていることが分かります。酔いやすい方は飛行機で向かうのがおすすめです。
雪道をゆく
利尻島に上陸して、鴛泊(おしどまり)フェリーターミナルからすぐの場所でレンタカーを借り、島内を散策してみます。冬の時期にもオープンしているレンタカー屋さんがあるのは大変ありがたいです。
利尻島の外周を囲むように道路が整備されているので、島内では基本的に迷う心配はありません。ただ、軽い雪が舞って視界が悪くなることは多々あり、雪が降らない地域で運転をするよりも神経をとがらせる必要があったのは確かです。
冬の利尻島を観光してみる
さて、インタビュー記事では観光資源を発見・提供するという目線で利尻島のオフシーズンをレポートしましたが、反対にこの記事では観光客の目線で利尻島を見てみようと思います。
大自然すぎるっ…!
滞在期間中、本当に感動したのは、どこにいてもずっと利尻山(利尻富士)の雄大さを感じられること。結局雲がかかった山頂まで見ることはできませんでしたが、それでも存在感は抜群です。なだらかな裾野は長く遠くまで続き、空との境界を描きます。なんだか自分の大きさを見失うような、途方もないスケールでした。
天気が良い日には、隣の礼文島も見渡せます。真っ白な山々を見ると、あぁ本当にここまで来たのだと実感しますね。
ミルピス商店、後継者募集中。
冬期にオープンしている観光施設が少ない中、通年で名物飲料の販売をしているお店があります。その名も「ミルピス商店」。1965年から「ミルピス」という乳酸飲料を手作りして販売しており、利尻島でしか楽しめない味を求めて全国から愛飲家が集まるのだとか。
カルピスのような、ヤクルトのような。見かけやネーミングによらずあっさりしているので、どんどん飲めてしまいます。牛乳瓶、味がありますね…私は名古屋市出身なので、小中学校の給食で瓶牛乳が出ていたのを思い出します。今もそうなのかな?
変わり種のミルピスもいただきました。左から、山ぶどう、こくわ、ギョウジャニンニク。
「こくわ」というものを初めて味わいました。洋梨のような、キウイのような…表現が難しいです。
店主の森原さんも優しくて、ついつい小一時間話し込んでしまいました。
…というかそれ、熱くないんですか…?
ちなみに、ミルピス商店では「ミルピス」製造権・販売権を有償で譲渡することも可能とのこと。もしご興味ある方がいらっしゃれば、はなれじま広報部にお問い合わせください。
誰もいない館内で輝く、つぶらな瞳
冬期に開館している貴重な施設、利尻町立博物館。利尻のことを知ることができると聞いて行ってみましたが、学芸員の佐藤さんいわく「今週初めての来館者です」とのこと。びっくりです。
館内にはアザラシを含めてたくさんの剥製が展示されています。利尻島では夏場にアザラシとふれあえるみたいですね。こんな目で見つめられたら持ってるエサ全部あげちゃう!
※特別な許可を得て撮影しています。
冬といえば温泉ですよ、温泉。温泉の中で語らって起業を決意した私たちにとって、温泉は聖地とも言える場所です。空気にふれて茶褐色になる鉄分たっぷりのお湯は、素人ながら良い泉質であることが分かります。快く撮影を許可してくださったホテル利尻さん、ありがとうございました!
寒い日の温そばはたまらん。
どんなに寒くても、いや寒いからこそお腹は空くもの。Googleマップで営業中の店舗をあたってみてもほとんど休業していたので、散歩して探します。宿泊していたホテルの近くにそば屋「凡天」さんがあったので「助かった」と入店。
かつて「寒いから冬は苦手」だとぼやく私に、「小さな幸せを感じやすくなるから素敵な季節だよ」と教えてくれた人がいました。あたたかいそばをすすりながら、そんなことを思い出す午後7時過ぎでした。
自然系の観光地は雪の下
夏期に多くの観光客が訪れるスポットが冬にどうなっているのか知るべく、島内の調査を続けます。以下の写真は、利尻山が水面に反射してふたつに見えると評判の「オタトマリ沼」。
うーん。水面どこ?って感じですね。本来は杭とロープで区切られているエリアの先に湖沼が広がっているのですが、完全に埋まってしまっています。除雪はされていなかったので、先端まで行くことはできませんでしたが、冬のオタトマリ沼を使ったイベントも開催されているそう。冬のイベントに関する内容については、インタビュー記事でも触れています。
こちらは、道道1076号「利尻富士利尻自転車道」の入り口。夏には海岸線沿いのサイクリングを楽しめる自転車専用道ですが、どこが道か分からないほど雪に埋まってしまっていますね(六角形をした標識のすぐ右側が道です)。ちなみに、滞在中地元の方を含めて自転車やバイクに乗っている人は一度も見ませんでした。
余談:隣の島から電波受信
ホテルのテレビに付けられていた注意書き。離島地域で周辺の島や対岸からテレビの電波を受信すること自体は珍しくはないのですが、興味深いのは島内に中継局があるのにもかかわらず、隣の礼文島から電波を受信しているエリアがあるということ。標高1,700m超えの利尻山を囲むように集落が点在している利尻島では、1ヶ所の中継局だけではすべてのエリアに電波を届けることができないのです。
これでもか、冬。
利尻島、地図で見ていると雪が降ることは納得できるのですが、やはり実際に訪れたことで冬の厳しさを実感する部分はかなりありました。基本的に、はなれじま広報部の取材は現地で行う主義を貫いていますが、今回特に「来てみてよかった」と痛感しています。
除雪車が走り回る朝
町内には除雪車が走り回っていて、道路は比較的通行がしやすい状態に保たれています。町では夏に採石事業へ割いていた人員を、冬期除雪にあてることもあるそう。観光業や漁業なども含め、降雪があることでオフシーズンとオンシーズンが明確に分断され、雇用の調整をするのが難しいという側面がありそうです。
雪かきをする方に話しかけてみる
夕方、除雪をしている方を見かけたので、冬の利尻で大変なことは何ですか?とお聞きしたところ、「見ての通りだべぇ!」と言われました。たしかに…。
除雪機を使って大部分の雪を除いたあと、スノーダンプや「じょんば」と呼ばれる雪かき用の道具を用いて細かい部分の除雪をする家庭が多いそうで、多い日は1日3回除雪をすることもあるとのこと。忙しい中インタビューにお応えいただきありがとうございました。
はなれじま広報部は全国を飛び回ります
きっとここまで読んでいただいた方には、「雪が降る島もある」ということが伝わったかと思います。オフシーズンにおける観光の可能性については、インタビュー記事にて紐解いていますので、ぜひそちらも覗いていただけると嬉しいです。
はなれじま広報部は、今後も全国の離島で取材を続けてまいります。離島に関連するお仕事のご相談、取材依頼など、いつでもご連絡くださいませ。
企画・取材・編集:ハテシマサツキ