【初島】「島×かわいい」で魅せる、体験の延長線上にあるお土産づくり

言わずと知れた日本屈指の温泉地、熱海。そこから定期船で約30分の場所にある有人離島が、「初島(静岡県)」です。今回、インタビューを行ったのは、初島でお土産店を営む田中 福将さん。島での体験を持ち帰るツールとして、お土産開発にも積極的に取り組む田中さんの「お土産観」をお聞きしました。

 

初島ってどんなところ?
静岡県熱海市の沖合に浮かぶ島。静岡県で唯一の有人離島として知られ、人口は2023年時点でおおむね200人。海に囲まれた開放的な景観と、気軽に非日常を味わえる距離感から、首都圏近郊の旅先として親しまれている。


▼HATSUSHIMA STORE&CAFE 店長 田中 福将 氏
2000年、初島生まれ。高校卒業後、父のがんをきっかけに、父が営むお土産屋「やまさ」を手伝うようになる。コロナ禍で売上が半減したことを機に、フードロス品のネット販売をはじめとする新たな取り組みに着手し、「HATSUSHIMA STORE & CAFE」の構想に至る。2022年、同店をリニューアルオープン。グラフィックデザイン、撮影、商品開発、資金調達などを独学で習得し、店づくりを行う。2026年株式会社やまさを設立し、同代表に就任。

初島には「目的地がない」?

2025年5月。『HATSUSHIMA STORE&CAFE』の田中さんは、初島で初となる完全オリジナル土産ブランド「#かわいい旅してきました」を立ち上げました。それから1年が経過したいま、「かわいい」をテーマにした同ブランドが目指すものをお伺いしていきます。

——まずは、「#かわいい旅してきました」のコンセプトを教えてください。
(田中さん:以下、敬称略)初島の楽しかった旅の思い出を「かわいい旅、してきました」と伝えたくなる気持ちを表現したお土産ブランドです。

初島でできる体験を軸に、レモンの絵柄をあしらった「初島レモンマドレーヌ」や、海老・いかなど初島の食をボックスに詰め込んだ『POCKET GIFT』シリーズ、初島航路で時々見られるイルカにちなんだ『はつしまいるか』グッズなど、幅広い商品を開発・販売してきました。


——初島の名産品ではなく「体験」に着目されたのですね。
(田中)そうなんです。そもそも、お土産の商品開発には、大きく二つの方向性があると考えています。一つは「その土地の名産品や文化を前面に出す方法」。もう一つは「体験価値に付随するお土産」です。

——前者は、『白い恋人』や『京ばあむ』のような、地域ブランドと直結したお土産のことですね。
(田中)まさに。ただ、この方法は地域が持つ自然や食のイメージが強いほど有利になっています。北海道や京都では、地域自体のイメージが確立しているので、お土産としてその土地のブランド性を表現しやすいんです。

反対に、既存のイメージが浸透していない場所で、新しいブランドイメージをゼロから育てるには時間がかかるといえます。初島や熱海では、現在進行形で「国産レモン発祥の地」として初島のPRが行われているものの、イメージが幅広く定着するのはまだ先のことになりそうです。


——そこで、後者の「体験価値に付随するお土産」に可能性を見出したというわけですね。
(田中)たとえばテーマパークのお土産は、原材料に特産品を使用していなくても「楽しかった思い出を持ち帰りたい」「誰かに共有したい」という気持ちで購入されます。観光体験そのものの価値に比例して、お土産の価値も高まるわけです。


(田中)その点、初島は海に囲まれた離島だからこそ、ある種テーマパークにいるような非日常感を味わえます。そこで、名産品としての強さだけで勝負するのではなく、「初島で過ごした楽しい時間を形にして持ち帰れるもの」を作ることに意味があると考えました。

——初島における非日常感や体験価値は、具体的にどこにあらわれるのでしょうか。
(田中) 実は、島内に絶対的な見どころや、明確な目的地はないんです。リゾート施設でアクティブに遊ぶ方もいれば、海を眺めてのんびり過ごす方もいる。ほとんどが「なんだか楽しそう」で島に来て、渡島後の過ごし方を現地で見つけるからこそ、お土産のラインナップを幅広く用意して、ひとりひとりの思い出とリンクしやすくする必要があると考えました。

——島全体をテーマパークとして捉えているからこそ出てくる発想だと思います。その結果生まれたのが、「#かわいい旅してきました」ということですね。

島に「かわいい」を掛け合わせた理由

続いて、お土産づくりに「かわいい」という表現を用いた理由をお聞きします。

——「体験に寄り添う」という方向性を踏まえ、なぜ島のお土産に「かわいい」要素を掛け合わせたのでしょうか。
(田中)初島で感じた楽しさを表現する上で、相性の良いキーワードだったからです。特に若年層の方々を見ていると、わくわくした気持ちが、写真撮影やお土産購入など、自然と「かわいい」ものを見つける行動につながっているように感じます。

そこで、私たちは「かわいい」という表現を用いて、初島を訪れた方の高揚感や喜びをそのまま形にすることに注力しました。その結果、これまで海苔をはじめとする海産物が中心だった初島のお土産に新たな選択肢が加わり、十人十色の思い出に寄り添いやすくなったように思います。

——「島っぽさ」と「かわいい」の両立は難しいものではなかったですか?
(田中)私自身は、その二つを相反するものだとは思っていません。初島での楽しかった思い出やわくわくする気持ちを演出するのに「かわいい」はむしろ相性が良く、それが間接的に島そのものを表すことにもつながると考えています。

『POCKET GIFT 初島レモンぐみぜりー』の箱には内側にもレモン柄が

(田中)実際、お土産のパッケージでは島の要素と「かわいい」が共存しています。たとえば『POCKET GIFT 初島レモンぐみぜりー』では、特産のレモンをモチーフにした柄をあしらいながら、箱の内側まで「宝石箱」のような華やかさを意識してデザインしました。開けた瞬間にも「かわいい」が広がるよう、細部にまでこだわっています。

——こうしたお土産を開発する際、参考にした商品はあるのでしょうか?
(田中)実は、直接参考にしたお土産品はありません。その代わり、少し視野を広げてお土産という枠の外にヒントを求めました。

たとえば『POCKET GIFT』シリーズはティファニーのようなジュエリーボックスからインスピレーションを得ており、「食の宝石箱」というコンセプトのもと企画した商品です。また、お気に入りのカフェのショップカードのかわいさに着想を得て、カードを同封した商品も生まれました。

こうした商品のデザインは、まず内容物をベースに箱の形を決め、そこに合う要素をさまざまな角度から拾い集めていくイメージで形にしています。

旅の余韻として残り続けるお土産を

最後に、田中さんに今後の展開についてお聞きしました。

——田中さんは今後、どんなお土産を開発していきたいですか?
(田中)これまでも、ずっと取っておきたくなるお土産を目指してきましたし、今後も同様です。お土産はいつも旅の最後にあり、旅の余韻を持ち帰ったり共有したりするためのものだといえます。商品の品質にこだわることはもちろん、パッケージまで含めてこだわっているのは、単に売るためだけでなく、食べた後も取っておきたくなる存在にしたいからです。

ふとパッケージの箱を目にした時、初島での時間を思い出し、また行きたいと思っていただけたら、それは島の未来にもつながっていくはずだと考えています。

——素敵な考え方です。お土産屋としては、どのような展開を考えておられますか?
(田中)今後も初島での体験を投影した商品を開発・販売しながら、熱海をはじめ島外地域への展開も視野に入れています。


(田中)ただ、体験を前提にした初島のお土産は島内でしか売れないと感じていて、熱海でお土産屋としての事業を展開するなら、また別の戦い方があると思っています。島の中だからこそ生まれるものを大切にしながら、同時に島という枠にとらわれない広い視点で、初島や熱海の地域ブランド創生に取り組みたいです。

——島内外の展開、どちらも今後が楽しみですね。ありがとうございました!

島でのわくわくした気持ちを詰め込んだお土産の数々は、ECサイトからも購入できます。ぜひ、チェックしてみてください。


「はなれじま広報部」では、島で活動する人や地域に根ざした取り組みを、丁寧な取材を通して記事としてお届けしています。あなたの想いも、ぜひ一緒に届けてみませんか。

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企画・取材・執筆:ハテシマサツキ
編集:卜部 奏音

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