離島の水道水はどうやって届く?島ごとに違う水の確保の方法

蛇口をひねれば水が出る。私たちにとっては当たり前のことですが、離島ではその「当たり前」が成り立たない場所があります。川がない。ダムが作れない。だから、水道水に頼れない。井戸を掘っても塩水が出る。そうした状況下でも人はなんとか水を確保し、島で暮らしてきました。そして、その方法は島ごとに大きく異なります。日本の離島に特化した情報発信を行う「はなれじま広報部」が、離島の水事情を暮らしの視点から解説します。

離島の水はどう確保されているのか

離島の水道水はどうやって届いているのか。その方法は大きく4つに分かれます。

①雨水を集めて使う

もっとも原始的でもっとも歴史の長い方法が、雨水の利用です。長崎県五島列島の赤島では、水道施設そのものが存在せず、今も島民が屋根に降った雨水を各家庭の貯水タンクに集めて生活しています。東京都の利島でも、かつては雨水をツボに溜めて使っていた時代がありました。

雨水利用の最大の弱点は、天候に左右されること。晴天が続けば水は底をつき、台風シーズンの大雨のあとは水質が悪化することもあります。「雨が降らなければ水がない」という状況は、現代の離島においても完全には解消されていません。

②井戸水を使う

地下水が比較的豊富な島では、井戸が重要な水源になっています。東京都の式根島でも、海底送水が実現する以前は、井戸水と雨水が生活用水のすべてでした。

ただし、離島の井戸水には独特の難しさがあります。海に囲まれた島では、くみ上げすぎると地下の淡水層に海水が入り込み、水が塩辛くなってしまうことがあるのです。また、島の地下水は絶対量が限られているため、夏の観光シーズンに人口が急増するとすぐに底をつくこともあります。井戸があるからといって安心とは限らないのが、離島の水事情の厳しさです。

家島(兵庫県)にある現役の井戸

③海水を真水に変える(海水淡水化)

海に囲まれた離島にとって、海水は無尽蔵にある資源です。この海水から塩分を取り除いて真水を作るのが、海水淡水化装置です。逆浸透膜(RO膜)と呼ばれる非常に細かいフィルターに海水を高い圧力で通すことで、塩分や不純物を除去します。

沖縄本島の北谷浄水場に隣接する海水淡水化センターでは、1日約4万トンもの海水を飲み水に変えています。天候に左右されず水を確保できるため、渇水リスクが高い沖縄の離島では、持ち運びできるタイプの海水淡水化装置を、緊急時に貸し出す仕組みも整備されています。

ただし課題もあります。海水淡水化には大量の電力が必要で、水道水1トンあたりのコストはダムの水の約2.8倍。装置の耐用年数もダム(約80年)に比べて短く、20〜25年ほどで更新が必要になります。小さな島にとって、この維持コストは決して軽い負担ではありません。

④隣の島や本土から水をもらう

自力で水を確保できない島が選んだあとひとつの方法が、海底送水管による他の島や本土からの送水です。

先ほど触れた式根島では、井戸水と雨水だけでは夏の需要をまかなえず、1976年に隣の新島からの海底送水施設が完成したことで、ようやく安定供給が実現しました。実は淡路島でも、明石海峡大橋の中に送水管を通すことで本土から水を引いています。

ただし、海底送水管は老朽化の問題を抱えています。設置から40年以上が経過した管も多く、更新工事には多額の費用と高い技術が求められます。水を「もらう」仕組みは安定しているように見えますが、それを支えるインフラの維持は決して簡単ではありません。

離島では水の確保が難しい!?

離島には、水源となる川や湖がないことが珍しくありません。面積が小さく傾斜が急な地形では、雨が降ってもすぐ海へ流れてしまう。ダムを作る平地もなければ、井戸を掘っても海水が混ざる。本土で当たり前の「川の水をダムに溜めて浄水する」という仕組みが、そもそも成り立たない島が多いのです。

相島(福岡県)のダム

そのため、水は安定して手に入るものではありません。シャワーの時間を短くする、洗濯の回数を減らす。島によっては水道料金が本土の数倍になることもあれば、夏場に給水制限がかかることもあります。離島では、水は「確保するもの」として扱われているのです。

水の確保から見えてくる、離島の暮らし

離島の水事情を知ると、「水が出る」ということの裏側にある仕組みと、それを維持してきた島の人々の工夫が見えてきます。水だけでなく、電気や通信、物流など、そうしたインフラのひとつひとつが、離島では暮らしを支えています。

はなれじま広報部では、通信インフラが乏しかった奄美の「離島の離島」にスターリンクが届いた請島・与路島の取材記事や、水道や電気のインフラが維持できなくなった島の現状に迫った人口10人以下の島の特集記事、離島への移住で使える支援制度をまとめた情報課の記事など、島の暮らしのリアルに触れられるコンテンツをお届けしています。離島の暮らしが気になった方は、ぜひのぞいてみてください。

この記事を書いた人:はなれじま広報部
「島から始まるWEBメディア」を合言葉に、日本全国の有人離島での取材、離島関連の解説記事制作、大学・企業との連携事業等を実施。プロジェクト・記事制作のご相談はこちらから。

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